ホーム > Webビジネス戦略レビュー > 【新時代のブランド戦略 vol.6】 JALの格安航空ブランドは成功するか

Webビジネス戦略レビュー

WEB BUISINESS STRATEGY REVIEW

【新時代のブランド戦略 vol.6】
JALの格安航空ブランドは成功するか

Google+
筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2010/09/16

JALが格安航空市場への参入を検討しています。
先月末に出された、日航の更生計画案。およそ1兆円の債務超過を克服するために、グループ人員1万6000人を削減し、今後の収益拡大策として国際線市場で成長している格安航空会社(LCC)事業への参入を検討します。
JALと言えば、かつて日本流の洗練された『おもてなし文化』を体現する、高品質なサービスが売りのブランド。そのブランドが、今度は格安ブランドに挑戦することになります。
果たして、JALブランドの格安化は成功するのか。
今回は、JALの格安航空ブランドについて考えてみたいと思います。


まず、日航が格安航空市場に参入することは、当然のことと言えるでしょう。
格安航空市場が、成長市場であるということも理由ですが、実際に、これまで日本の航空会社は、長年にわたり効率化されて来ませんでした。かつて、アメリカの航空規制緩和を受けて、サウスウエスト航空が格安航空会社として知名度を上げたのが、1990年代前半。その後、同様のビジネスモデルが瞬く間にアメリカ全土へと広がり、インターネット経由の直販も登場したことで、世界の航空市場の勢力図は、格安航会社によって一気に塗替えられることになりました。
このような環境変化の中で、日本の航空会社は20年間も効率化されて来なかった訳ですから、奇跡に近いと言えます。

さて、問題は、どのように既存のJALブランドと格安ブランドを共存させるかです。
一見、相反するブランドを抱える戦略に見えますが、実は、ブランド・ポートフォリオとしては望ましい形になります。ブランドは、下図のように、ピラミッド型のレイヤーとして管理します。


従来のJALブランドは、ピラミッドの頂点『フラッグシップ』しか持っていませんでした。JALに乗る人は、常に高品質なJALブランドに触れることができる一方、その他の選択肢を希望する人は、航空会社を替えるしか方法がありませんでした。これは、自動車ブランドにおいて選択肢がレクサスしかないことと同じで、いかに硬直的なブランド・ポートフォリオか理解できるでしょう。当然、それ以外を希望する人の方が圧倒的に多く、そこに膨大な市場が待っていることは容易に想像できます。JALが格安航空ブランドを保有することで、『フラッグシップ』の下に『スタンダード』を作ることができ、文字通り裾野を広げることが可能になります。

次に、これまでの高品質なJALブランドと、新しい格安ブランドを、どのように棲み分けをするかです。
長年培って来たJALブランドを失墜させたり、中途半端なポジショニングでブランド同士が顧客を奪い合うなどの事態は避けなければなりません。一方、格安航空市場自体も競争が激化していますので、正面突破にも不安が残ります。
下の図は、ブランドのポジショニングを表した図です。ほとんどのブランドは、これら3つの主義に当てはなります。


従来のJALブランドは、『顧客主義』です。顧客が望む高品質なサービスを提供するかわりに、高価格な設定が特徴のポジショニングです。
一方、『効率主義』は格安航空市場です。効率化を追求するかわりに低価格を実現するポジショニングです。その中心地では世界の格安航空会社がひしめき合い、競争が激化しています。

仮に、JALが、自身の高品質なJALブランドの延長線上で格安航空会社設立した場合、ポジショニングは、「A」のマークがある『顧客主義』と『効率主義』の間にあるでしょう。しかし、このポジショニングは、お互いのブランドの距離が離れていないため、顧客を奪い合うリスクがあります。同品質のブランドがあった場合、顧客の大半は安い方に流れるものです。その結果、単に従来ブランドの値引きをしただけの結果となりかねません。
一方、『効率主義』の中心地で戦うには、DNAが違い過ぎます。かつて、ダイムラーベンツがクライスラーと経営統合し、その後ブランドのDNAの違いから別れたような結果になるでしょう。

最も有望なポジショニングは、「B」マークのある『効率主義』と『商品主義』の間です。
この距離であれば、フラッグシップである従来ブランドと顧客を奪い合うことはありません。また、JALブランドの良さを活かしながら、効率主義を取り入れることが可能です。
『商品主義』は、文字通り、商品力が売りになるポジショニングです。JALブランドで培って来た高品質なもてなしを、人間が介在するのではなく、何らかの商品力として活かします。もし、商品力として生まれ変われれば、その時点で人間が介在しない分の効率化が実現できます。そして、2つのブランドが独自に顧客層を広げ、マーケットを制覇することが可能になるでしょう。

READ MORE

美白生活 2015年10月オープン あなたのシミのお悩み解決します。

MEMBERSHIP

Webビジネス戦略レビュー会員

メールアドレスをご登録いただくと、最新のWebビジネス戦略レビューをメールでお知らせするサービスです。

お名前

メールアドレス

MOST VIEWED

【経営課題とブランド戦略vol.2】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(前編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.02】
スターバックスのブランド戦略がこれからも勝ち続ける理由

【ブランド戦略の威力 vol.14】
H&Mのブランド戦略

【経営課題とブランド戦略 vol.3】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(後編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.05】
日本酒「獺祭(だっさい)」のブランド戦略

【ブランド戦略の威力 vol.11】
なぜスターバックスは減速し始めたのか

【経営課題とブランド戦略 vol.6】
後発企業でも勝てるポジショニング戦略

30兆円の巨大市場、米国住宅リフォーム業界を狙う「Houzz」

【IT時代のブランド戦略 vol.06】
H&MとユニクロはUS市場を取れるか

実物の法律書類をオープンソースにしてしまう、法律業界の革命児Docracy

INDEX

教育・研究機関

公的機関

ファッション業界

フード業界

旅行業界

自動車業界

IT・家電業界

ネット業界

金融業界

健康・スポーツ業界

医療

海外事例

Webビジネス戦略理論

ブランド戦略理論

Keywords

ブランド戦略用語解説

▲ページトップへ