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【新時代のブランド戦略 vol.2】
『エコ』ブランド戦略は本物か?

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2009/12/08

「いろはす」という天然水が売れています。
日本コカコーラによると、発売後わずか183日で2億本(520ml PET)を突破。これは同社のカテゴリー史上、最速の売れ行きを記録しています。好調の理由は、『エコ』というブランド戦略。業界最軽量のペットボトルはCO2削減に寄与し、コモディティ化した天然水市場で購買を誘う新たな差別化方法です。しかも、低成長時代に合わせて価格も『エコ(Economy)』。
この『エコ』ブーム、様々な業界で取り組まれていますが、いつまで続くのか気になるところです。

今回は、今後の世界経済の行く末を見ながら、『エコ』ブランド戦略は本物なのか、考えたいと思います。


まず、昨今の『エコ』ブランド戦略には、エコロジー(環境保護)という面と、エコノミー(経済的)という面があります。
従来のエコロジーブームは、「地球環境に良いことは多少高くても支払おう」という、消費者の自己犠牲的な精神を求めるものでした。つまり、エコロジー分を商品価格に転嫁していたのです。しかし、世界的な不況の中、地球環境も大事ですが、消費者は自身のお財布の中身にも敏感になりました。そこで、これまで『環境活動=高価格』を改め、『環境活動=しかも低価格』という価値を作り、このダブル・バリューなコンセプトが現在の『エコ』ブランド戦略の成功要因であると考えられます。

『エコ』ブランド戦略には、エコロジーとエコノミーという側面があるとお話ししましたが、今回は『エコロジー』というキーワードについて、今後の世界の流れを考えてみたいと思います。
結論から言いますと、『エコロジー』は明らかに今後10年続くグローバル・トレンドであり、これからのブランド戦略に欠くことの出来ないキーワードです。

『エコ』ブームは、アメリカの政権交代によって誕生したオバマ米大統領が就任演説をした時、その確実的な本格的拡大が確認されました。リーマンショックを境に大金融時代の終焉を迎えた米国は、新しい経済活動の舞台として『新エネルギー戦略』を打ち立てました。それは、政情不安定な中東や中南米といった産油国の石油に依存しないエネルギー、つまり風力や太陽光といった環境エネルギーを主軸とした活路です。
そこに、「不都合な真実」でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元アメリカ副大統領が提唱する「地球温暖化を止めるにはCO2削減が不可欠」という理論が重なり、京都議定書の批准や排出権取引の拡大など、世界はCO2削減に向けた機運が一気に高まっており、これが世界的な『エコ』ブームの根源になっています。
したがって、今や『エコ』の定義とは、CO2削減なのです。

さて、アル・ゴア氏といえば、1990年代の副大統領の時には『情報スーパーハイウェイ構想』を推進し、この政策もあって米国を始め世界のインターネットの発展は大いに促進された歴史があります。トレンド・メーカーである同氏が、今回は地球温暖化防止をテーマに掲げているということもあり、かつてのインターネットと同様に、『エコ』ビジネスは爆発的な市場成長が期待されています。経済界のトップの間では、「環境ビジネス市場はITビジネス市場を遥かに超える規模」と評価されています。

アメリカは現在のところ京都議定書から離脱していますが、オバマ政権誕生を機に再び参加するのではとの観測が伝わっています。仮に、京都議定書で定めた通り世界が本格的にCO2削減に進むと、各国で法改正が行われ、企業にCO2削減目標を課す時代が到来します。すでに欧州では一定以上のエネルギーを使う企業には排出枠を義務づけており、アメリカが参入することで世界の排出権取引は、世界金融と同等の地位に上り詰めると予想されています。
現在、日本では企業のCO2削減は義務化されておらず、CSRとしての自主的な活動として位置づけられていますが、オバマ政権時代に先の『新エネルギー戦略』が具体化することは確実であり、企業は否が応でもCO2削減に取り組まなくてはならない日がやって来るのです。

一方、地球温暖化の原因は本当にCO2なのか、という議論が科学者の間でなお行われています。しかし、世界経済はCO2削減に向けた企業の新たな取り組みを、次の成長テーマとしようとする機運が高まっており、「エコ=CO2削減」を覆そうにも、もはや後戻りできないほど政治的な下地が整っています。

したがって、ブランド戦略の視点から考えると、このCO2削減運動が続く限り、『エコ』ブームは続くと考えられます。そして、この流れを察知し、いち早くブランド戦略に組み込んだ企業ほど、大きなリターンを手する確立が高まります。なぜなら、かつてのITブーム初期に、IBMはライバルに先行して「eビジネス」キャンペーンを全世界で展開し、同社のブランド力を飛躍的に向上させました。しかし、全ての企業がITを導入した現在、もはや『IT』は差別化キーワードではなく、コモディティとなりました。これを念頭に置くと、『エコ』ブランド戦略の勝負は、本格化が確認されている現在から、将来各国の法改正でCO2削減が決まるまでが主戦場と考えられます。

先の「いろはす」の業界最軽量ボトルも、法律によって企業が本格的にCO2削減を義務づけられると、全清涼飲料に取り入れる必要があり、もはや「業界最軽量ボトル」は差別化要素になりません。『エコ』をブランド戦略に使うのであれば、今がチャンスであると言えます。

次回は、『エコ』ブランド戦略のもう一つの側面、エコノミーについて考えたいと思います。

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