
ハルデザインコンサルティング株式会社
代表取締役社長兼CEO
宮崎 晴人
HARU MIYAZAKI
ブランド戦略コンサルタント。主な専門分野は企業、商品、人材、CSR、IR。「ブランドによる経営課題の解決」がテーマ。米国シアトルの高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部卒業。1999年にハルデザインコンサルティング株式会社を設立。
【新時代のブランド戦略 vol.1】
モチベーション向上戦略
先月、米グーグルは、中国法人社長で米本社の副社長も務める李開復氏が9月半ばに退社すると発表しました。
彼は、マイクロソフトから移籍し、グーグルの中国進出を率いた有力幹部のひとりです。彼が辞めた経緯は誰も知りません。が、苦労して獲得したグーグルにとっては考え深い結果でしょう。
厳しい時代や経営局面で、社内の士気を上げるにはどうすべきか。
今回は、モチベーションについて考えたいと思います。
モチベーションは、会社の業績が良ければ、自然と上がるものです。
コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーによると、良い人材ほど働く動機は以下のに3つに集約されています。
1)刺激的でやりがいのある任務につきたい
2)一流の企業で働きたい
3)富を手に入れたい
つまり、会社の将来に希望がなければ、『やりがい』も『富』も手に入りません。つまり、モチベーションは自ずと低下することになります。特に、実力主義や成功報酬を重んじる新しいプロジェクトや企業ほど、この症状は顕著に出ます。
さらに、企業経営のジレンマは、社内の士気が低い状況が続くと、業績も伸びて行かないことです。
良い会社は業績がどんどん良くなり、悪い会社はどんどん悪くなる現象を、ニュースを通して目撃した人は多いと思います。これは、モチベーションと業績が表裏一体の関係にあることを示しています。
さて、どうしたらこのジレンマを克服できるでしょうか。
『リーダーのブランド力』という観点から、以下のような課題と解決が鍵になります。
1)設定している目標が高すぎる
リーダーは、大きな目標を掲げたいものです。
しかし、マラソンの未経験者が、最初の目標を42.195kmを走るフルマラソンに設定した場合、大部分の人が挫折するでしょう。最初はまず3km走り、次は5km、10kmと、小さな成功と自信を積み重ねるステップが必要です。
ビジネスにおいても同じように、高い目標設定で当初は社員のやる気が高揚しても、到達のプロセスで挫折者が増え、結果、社内のモチベーションが低下することがあります。一般的な社員は、リーダーほど大きな目標に貪欲ではありません。したがって、リーダーはまず、社員の気持ちを察しながら、達成可能な目標設定を通してモチベーションを高めて行く配慮が必要です。
2)何のための仕事かわからなくなる
「自分が何のために働いているかわからない」
社員のこういう言葉に対し、ナイーブ過ぎると感じるリーダーもいるでしょう。しかし、自身の夢を追うリーダーと、それについて行く社員では、天地ほどの温度差があるものです。その温度差を埋めるには、リーダーは「自分たちがいかに偉大な挑戦をしているか」「ゴールの先にどのような素晴らしい世界が待ち受けているか」絶えず社内に語り続ける必要があります。つまり、働く意味を社員と常に共有することです。そのためには、リーダーは立場の階段を少し降りて、社員の気持ちに向かい合う姿勢が重要です。
3)リーダーは率先して業績を体現する
苦境に陥ったアップルに、スティーブ・ジョブス氏がCEOとして復帰した時、彼の年俸は1ドルでした。ジョブス氏が報酬を得るには、業績改善による株価上昇で、ストックオプションを換金する以外方法はありません。まさに、背水の陣であり、ジョブス氏はその時の経営状態を体現し、社員全員の目を覚まさせることになります。
このように、リーダーは率先して業績を体現する必要があります。業績が悪い中、高額な報酬や待遇にしがみつくリーダーは、近年、米国の自動車産業や金融機関で見られるように批判の的になります。
逆に、業績が良い会社のリーダーが、あまりに質素なのも問題です。社員にとってリーダーは、言わば戦国時代の『大将』なわけですから、自分たちの大将が大将らしくなければ、夢も希望もありません。
このように、業績が良くても悪くても、リーダーが率先して業績を体現すれば、その会社のモチベーションは常に保たれることになります。
このように見ますと、モチベーション向上においてのリーダーの役割(=リーダーのブランド力)は非常に大きく、『希望』と『自信』を社内で共有することが、引いては業績にも大きな影響を与えることが分かるでしょう。


