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【『おもしろい会社』が生き残る vol.1】
サントリーの過去最高益更新に学ぶ

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2009/02/06

史上空前の世界同時不況。
大企業が1000億単位の赤字に陥り、かつてない大幅な生産調整を強いられています。飛ぶ鳥を落とす勢いだった高級ブランド企業も、一転して、従来の戦略を見直す事態に発展しています。
しかし、100年に一度の大不況と言われる時代でも、元気な会社はあるものです。サントリーは、先日、過去最高益を更新すると発表しました。

今回は、サントリーの競争力である「おもしろさ」について考えたいと思います。


「『もうかるか』いうことだけやなしに、『おもろいか』という尺度で考える経営者がもっといていい」
サントリーの元会長である佐治敬三氏の言葉です。その『おもろいか』という発想が、今、サントリーを大いに儲けさせています。
2008年12月期の連結売上高は、前期比1.2%増の1兆5129億円。純利益は33.2%増の320億円と、共に過去最高を更新しました。その大きな要因が、ビール事業の黒字化です。通常のビール市場や発泡酒市場が、毎年縮小して行く中、高級ビール市場は大きく伸びています。今や高級ビールの代名詞である、サントリーのプレミアムモルツは、5年前と比較して、20倍以上の出荷数、約1300万ケースを生産しています。まさに、右肩上がりの高成長ぶりです。

佐治敬三氏がビール事業に参入したのが、1963年。実に、45年目にしての黒字化が、今回の最高益に貢献した格好です。
しかし、45年も赤字の事業を続けて行くことは、並大抵な精神ではありません。会社としてそのような挑戦が許される風土でなければ、到底不可能なことです。
ここに、サントリーの偉大なブランド力があります。
「おもろいやないか。やってみなはれ。」
佐治敬三氏の有名な言葉ですが、実は、父であり創業者である信治郎氏から、再三言われた言葉だそうです。
理屈を並べていても、物事は運ばない。実行をまず第一に考える。そこからいろいろ学んで行けばいい。サントリーの社内では、上司も部下も、面白いならまずやってみよう、というところから話を始めると言われています。

面白いことはやる、というサントリーのブランド力は、広告、PR活動に対しても同じ情熱を向けられています。
創業者の信治郎氏は、創業当初から「宣伝広告や!」といって、広告のためには金を惜しまなかったと言われています。マーケティングという言葉もない、明治40年当時の話ですから、その先見の明には驚きです。
事実、酒類メーカーであるサントリーが、広告やPR活動にお金をかける行動は、非常に理にかなっています。なぜなら、お酒という商品は、成分表などを見比べて購買を決めるものではないからです。アルコール度数が5.0%か5.5%かで買うことを迷う人はいないでしょう。また、おいしいかどうかに関しても、実は、人間は絶対的な味覚を持っていません。最終的には、イメージこそが、購買の決定的な条件になるのです。したがって、イメージ作りにお金をかけることは、サントリーにとって、最も有効に資金を運用していることにつながっているのです。

しかし、サントリーの広告は、一目見て「この広告はサントリーらしい」と思うのは、なぜでしょう?
1994年の長塚京三さん出演のサントリーOLDのCMでは、中年男性の切ない恋の一幕が紹介されています。

「課長の背中見るの好きなんです」
「やめろよ」
「しばらく見ていてもいいですか?」
「やめろよ」
--恋は、遠い日の花火ではない--

昔からサントリーの広告は、人情味が溢れ、人間や人生にフォーカスしたものが多く見られます。商品そのものの特性をアピールするのでなく、商品の背後に広がるシーン、つまり、人生そのものに対しての深い愛情が伝わるような表現を好んでいます。日常に潜む喜びや切なさを広告の題材として取り上げることで、一貫して人間に焦点を当てた芸術的・文化的なイメージを作り上げています。その芸術や文化に対する想いは、1961年にサントリー美術館設立など、以降、音楽・文化の活動を広げ、サントリーホール、サントリーミュージアムなどを運営を通して、広告の世界を越えてメッセージを発し続けています。

佐治敬三氏はこう言っています。
「商売だけに凝り固まっておったんでは、先細りになっていく」
『やってみなはれ』の精神、イメージ作りへの情熱、そして文化活動。サントリーのブランドは、この3つの要素に確実に支えられています。そして、この3つは、すぐに明日の売上や利益として、跳ね返って来るものではありません。
しかし、2008年12月期の最高益更新は、これら長年のブランド創りへの執念が、実を結んだ瞬間であると言って、間違いはないでしょう。

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