
ハルデザインコンサルティング株式会社
代表取締役社長兼CEO
宮崎 晴人
HARU MIYAZAKI
ブランド戦略コンサルタント。主な専門分野は企業、商品、人材、CSR、IR。「ブランドによる経営課題の解決」がテーマ。米国シアトルの高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部卒業。1999年にハルデザインコンサルティング株式会社を設立。
【ブランド戦略の威力 vol.12】
Wホテル・ブランドに見るビジュアル・トレンド
都会の喧噪と異空間。
そのエントランスをくぐると、ガラス天井から水が四方の壁をつたって滝のように流れ落ちます。
エレベータでロビー階へ上がると、昼間でも薄暗いフロアに、レッド、ピンク、ブルー、グリーンといったナイトクラブ風の照明。足元から広がるスタイリッシュな白いラウンジソファーの群れ。鮮烈な赤色を放ったバックライトに照らされる艶やかなチェックインカウンター。中央には色彩豊かで、どこか切ないモダンアートのオブジェ。
これは6年前、ニューヨークのタイムズスクエアにある、Wホテルを訪れた時のワンシーンです。
Wホテルは、デザインホテルの代表として、スターウッド・ホテル&リゾートが世界で展開するブランドです。日本国内第一号が、2011年2月に横浜に完成します。
そして今、スターウッドからは、『エレメント by ウェスティン』と『アロフト A Vision of W Hotels』の2つの新ブランドがスタートしています。
今回は、Wホテル・ブランドに見るビジュアル・トレンドについて考えたいと思います。
Wホテル・ブランドは、1998年に開業したニューヨーク店から始まります。
現在、世界に25拠点存在し、今後3年間に27拠点がオープンする予定です。その内の一つに、横浜が決まっています。
Wホテル・ブランド誕生のきっかけは、1984年にカリスマ的なホテリアであるイアン・シュレーガー氏が建てたモーガンホテル・ニューヨークであると言われています。
イアン・シュレーガー氏のキャリアは、まず、Studio 54というナイトクラブのプロデュースで一躍脚光を浴びたところから始まります。アンディ・ウォホール、ミック・ジャガーといった当時のセレブリティを集め、最先端なニューヨークの夜のライフスタイルを提案したことで有名です。
その後、イアン・シュレーガー・ホテルグループを設立。先のモーガンホテル・ニューヨークを皮切りに、マイアミ、ロス、サンフランシスコ、ロンドンと拠点を拡大し、いわゆるブティックホテル(デザインホテルの英訳)の先駆けとして再び脚光を浴びる立場となります。現在、イアン・シュレーガー氏本人は世界最大のホテルグループであるマリオット・インターナショナルと組み、新ホテルブランドのプロデューサーとして活動していると言います。
Wホテル・ブランドは、イアン・シュレーガー氏と直接関係はありませんが、その世界観を大いに引き継いでいるようです。
先のタイムズスクエアのWホテルに見られるように、水や石といった自然素材と、ウォホールなどのモダンアートを連想させるエキセントリックなデザインは、このブティックホテル業界の大きなビジュアル・トレンドとなっています。
日本でも、有名なインテリアデザイナーである森田恭通氏も、ブティックホテルのデザイン・トレンドを押さえているようです。ラウンジスタイル、ナイトクラブ風、モダンアート。フランス料理の巨匠ジョエル・ロブション氏のレストランや六本木ヒルズ、そして香港Wホテルが森田恭通氏に依頼しているように、イアン・シュレーガー氏から始まったブティックホテルと現在の商業店舗デザインは、大きな流れとして一体となっています。
そして現在、スターウッドは、『エレメント by ウェスティン』と『アロフト A Vision of W Hotels』という2つの新ブランドをスタートさせました。
『エレメント by ウェスティン』は、エコをテーマにしたホテルで、そのサービス品質は名前にあるように、ウェスティン・ブランドで保証されています。エコ、ヘルシー、リラックスといったキーワードをもとに、長期滞在もできるリーズナブルな価格設定でポジショニングされています。近年、エコがひとつのブームですが、確かにエコに特化したホテルはありませんので、差別化の大穴と言えるでしょう。
一方、『アロフト A Vision of W Hotels』というブランドは、名前の通り、Wホテルが保証するファミリー向け長期滞在施設です。Wホテルのモダン・ラグジュアリーな世界観を、手軽な価格で体験できるブランドとして、裾野を広げる戦略です。
このように見ると、モダンアート的なビジュアル・トレンドは今後も継続しながらも、新しいコンセプトが生まれて来ていることがわかります。その一つがエコやファミリーなどのコンセプトです。
また、ハイアットの新ブランド『ANdAZ』第一号は、ロンドンのリバプールストリートにありますが、ここはモダンなデザインとアットホームなコンセプトで作られており、刺激的なWホテルとはひと味違った居心地やヒーリングを重視しているようです。
モダン・デザイン+より顧客ニーズに特化したテーマ。
これが今後のトレンドになるでしょう。


