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【ブランド戦略の威力 vol.7】
プラダ携帯に見る共同ブランド戦略

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2008/05/15

プラダ携帯が6月に発売されます。
パートナーは、LGとドコモ。プラダが持つファッション性を、ハイエンド携帯市場で展開する共同ブランド戦略です。

共同ブランド戦略(co-brand strategy)は、どうして起こるのか。
それは、特定の市場にブランドと製品が溢れる程投入され、他社製品はもちろんのこと、自社内の製品とも差別化が困難になった時に起こります。他製品と一線を画すことで、新たな認知を呼び戻し、また、成熟した市場で再び活力を取り戻すために行う、ブランド戦略の一手法です。

今回は、プラダ携帯のブランド戦略を通して、共同ブランド戦略のメリットとリスクについてお話ししたいと思います。


現在、国内の携帯電話台数は、5230万台。携帯メーカーは、海外勢も含めて20社に上ります。今後、Appleから話題のiPhoneが投入されることもあり、携帯市場は、ブランド数(携帯メーカー数)、製品数ともに増加し、各社の競争は明らかに厳しさを増す傾向です。
この中で発表されたプラダ携帯は、典型的な共同ブランド戦略です。

共同ブランド戦略のメリットは、資源と時間の短縮にあります。

LGの資金力と技術力をもってすれば、プラダと提携しなくても、ハイエンド機能とファッション性を兼ね備えた携帯電話を創り出すことは十分できるはずです。しかし、この場合、一から独自ブランドを浸透させるために、膨大な労力と時間が必要になります。携帯市場の製品サイクルの速さを考えると、このようなスピード感が乏しい方法は採用できません。また、高級ブランドの顧客のような、表から見えにくいニッチ層に対し、LGがピンポイントでマーケティングを仕掛けられる可能性も未知数です。このような状況を考えると、LGにとってはプラダと提携することで、ブランド認知時間の節約、顧客層の共有という、2つのメリットを享受できます。また、今回の高級ブランドとのコラボレーションが、LG自体のステイタス性を向上させる効果も期待できます。

では、プラダにとってのメリットは、どこにあるのでしょうか?
実は、世界のファッション市場も飽和状態にあります。ジョルジオ・アルマーニやルイ・ヴィトンといった巨大高級ブランド企業の成長が緩やかになる中、躍進が止まらないドルチェ&ガッバーナや、次々と参入する若手デザイナーブランドが追い上げています。その影響もあるのか、例えばアルマーニの事業展開は、ファッションに留まらず、家具事業、レストラン事業、ホテル事業と、ファッション以外の市場に参入を試みています。また、ルイ・ヴィトンにおいては、インドでの拡大方針を打ち出しており、収益拡大の矛先を新興市場へと向け始めています。
プラダにとっても、この流れは全く関係のないことではないでしょう。業界は違えども、状況は携帯市場と非常に似ています。
プラダのメリットは、事業拡張の可能性の模索と、若年層へのプラダ・ブランドの認知、この2点にあります。
今回のプラダ携帯は、プラダ・ブランドのライセンス貸しではなく、LGと共同で開発をしたという熱の入れ具合です。ファッション以外の市場に対して、プラダ・ブランドが拡張可能なのか、プラダ自身が真剣に力を注いで挑戦する姿勢が見て取れます。また、他の老舗ブランド同様、主力顧客層の高齢化に伴い、事業が先細りになる危険性があります。携帯電話という、比較的若年層に馴染みがあるマーケットでプラダの名を広めることで、世代交代をスムーズに進め、この状況を乗り切る狙いもあるでしょう。

ドコモのメリットは、ドコモ・ブランドの活性化と、高価格帯携帯市場のシェア拡大です。
auの追い上げ、ソフトバンクの参入により、苦戦が続くドコモです。ブランドとしてエネルギーを取り戻すべく、活性化要素をプラダ携帯に求めることができます。また、ドコモ自身のブランド・エッセンスとして、法人取引に代表されるように、ハイエンドユーザーへの強みがあります。このエッセンスが、高価格帯携帯市場と重なるため、シェア拡大に向けて相乗効果を生みます。続くiPhoneも同じ理論の上で展開されるはずです。

このように、競争が激化したマーケットでは、共同ブランド戦略はひとつの有効策です。
一方、リスクも同時にあることを忘れてはいけません。共同ブランド戦略は、上手く行けば「最高」、上手く行かなければ「最低」になる戦略です。つまり、失敗した場合、自らのブランドを傷つける結果を招きます。
たとえば、今回のプラダ携帯は、ver.2、ver.3と続くのかです。もし続かないのであれば、今回購入したプラダ・ファンは、次はどこの携帯買って良いものか、困惑する可能性があります。振り返れば伝説となり、大切な顧客が振り回されなければ良いのですが、それも今回の第一弾の売れ行き次第といったところでしょう。
もう一つのリスクは、ファッション・ブランドのプラダにとって、本当に携帯電話市場が、ブランド拡張の矛先として最適な場所なのかです。アルマーニのように、家具、レストラン、ホテルであれば、ラグジュアリー・ライフスタイルという関連性があります。もちろん、考えようによっては携帯電話もライフスタイル・ツールの一つですが。このハイテク路線へのブランド拡張が正解かどうかを見極めるには、もう少し時間が必要なようです。
しかし、今後、携帯電話を中心に個人のライフスタイルが変わって行く時代です。その大きなトレンドの中で、世界的なファッション・ブランドとして先手を打った理由は、リスク以上のリターンがあると考えたからに他ならないでしょう。

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