ホーム > Webビジネス戦略レビュー > 【ブランド戦略の威力 vol.5】 Googleに学ぶインターナル・ブランディング

Webビジネス戦略レビュー

WEB BUISINESS STRATEGY REVIEW

【ブランド戦略の威力 vol.5】
Googleに学ぶインターナル・ブランディング

Google+
筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2008/04/15

"We don't just want you to have a great job. We want you to have a great life. We provide you with everything you need to be productive and happy on and off the clock."(我々はあなた方に、良い仕事に出逢うだけでなく、素晴らしい人生を見つけてもらいたい。そのために必要なものはすべて提供する)
グーグル創業者のラリー・ペイジ氏が、入社希望者に語った言葉です。
素晴らしい一言であり、いかにもグーグルらしい社風を物語っています。この壮大で魅力的なインターナル・ブランドに、多くの若者達が心を引かれています。米FORTUNE誌によると、全米で最も働きたい企業ベスト100社の中で、グーグルは2年連続トップを獲得しています。世界中から優れた人材が集まるグーグルにとっては、人材募集の苦労もどこ吹く風といったようです。

グーグル以外の企業でも、同じようなメッセージを発すれば若者達の心を掴むことができるかも知れません。しかし、果たして、本当に同じようなことを言うことができるかが課題です。あなたや私の会社は、「必要なものはすべて提供する」と宣言できる潔さがあるでしょうか。もし、宣言できないのであれば、私たちの会社は、優秀な人材確保という点において、いつもグーグルに負けていることになります。

さて、今回は、グーグルの社風を通して、21世紀のビジネス・マーケットで優れた人材を獲得する、インターナル・ブランドについて考えたいと思います。


企業のブランドとは、何で構成されるのか。
一般には、『顧客』、『従業員』、『株主』の、3つのステークホルダーへの対策で構成されています。日頃、考えられている企業のブランド戦略とは、『顧客』向けの対策が大部分を占めていますが、実は、残りの2つのステークホルダー向けも、重要な要素になります。なぜなら、これら3つのブランド構成要素は、互いに影響し合い、一つのブランド・アイデンティティを形成しているからです。先のグーグルの入社希望者へのメッセージは、『従業員』向け対策であることは明らかですが、その精神は『顧客』が感じるブランドと重なり合い、相乗効果をもたらしています。

『従業員』向けのブランド対策は、社内のことであるがゆえに、実は、おろそかになりがちです。特に、働き手不足に悩む多くの日本企業が、足元の社風を改善しないまま、優秀な人材が来てくれたらと願っている姿は、誰の目にも矛盾に映るでしょう。お金をかけた求人広告や、素敵なキャッチフレーズに引かれるのは、自己確立が未熟で、意思がはっきりしない層の人材であり、本当に優れた層は自身のアイデンティティがしっかりとした人たちです。このような自己を明確に持っている優秀な人材を獲得するには、企業側の社風も明確なアイデンティティを備える必要があります。これを、インターナル・ブランディングと言います。

インターナル・ブランディングは、今後、日本企業にとって非常に重要な課題になることが予想されます。
その理由は、3つあります。

まず、10年前と比べて日本の役割が変化しました。
労働型産業は中国とインドが担い、日本は頭脳型産業へ移行する必要があります。この過程で、当然、働く人々の意識や、社風にも進化が求められます。
しかし、すべての日本企業が、この変化に対応できているわけではないようです。依然として、ミッションやノルマは上層部で決定し、大部分の社員は黙々と与えられた仕事をこなして行く。ホワイトカラーの仕事でさえも、工場労働的な発想で捉える傾向があります。
このような過去の慣習を乗り越える方法として、グーグルの有名な『20%ルール』があります。すべての従業員は、自身の勤務時間の20%を創造的な研究活動に使って良いというものです。週5日勤務であれば、1日は自分の専門分野の開拓やキャリアアップにつながる研究を行うことができます。つまり、ノルマが降ってくる労働的な働き方ではなく、自らミッションを見つけ出し、自分の意思で実行する働き方に導く制度です。
よく考えればわかりますが、本当に優秀な人材は、「言われなければやらない」や、「何をして良いかわからない」といったことはあり得ないでしょう。そのため、グーグルでは、優秀な人材の要素として創造性を重視するとともに、自分で見つけたミッションを最後までやり抜く『強い意志を持っている人』を望んでいるようです。

次に、優秀な人材は、向上心が強いゆえにキャリアアップを望みます。
しかし、同時に、それは好条件での転職の機会を与えることになり、これに対して日本企業は寛容でない点があげられます。一度仕えたら死ぬまで離れない話は、戦国時代のことであり、今後は日本もグローバルな常識に適応して行く必要があります。コンサルティング会社のマッキンゼーによれば、優れた人材は、20年、30年先まで用意されている安定雇用よりも、5年先までしか見えなくても刺激的な仕事がしたい欲求があるという調査結果が発表されています。実力に自信がある人材ならば、企業を渡り歩くことは当然であり、これに対して企業側が柔軟でなければ、その企業にはいつも安定指向で挑戦を嫌う、極々普通の人材が集まることになります。したがって、優れた人材を自社に引き寄せるためには、彼らのキャリアアップを手伝い、成果によっては大幅な好条件を提示する社風をつくることが求められます。

最後に、日本企業は、優秀な人材も、普通の人材も、一緒くたに扱う傾向があります。職位や報酬においてあまり差を付けない。これが日本流の『秩序』というものですが、グローバル・マーケットで人材獲得競争が激化する中、この秩序がどこまで維持できるかが問題です。日本企業がこの秩序を守る背景に、一度入社してしまえば社員は『身内』であるという意識が少なからずあり、身内に大きな差を付けることは日本の慣習としてやりにくいことです。しかし、近年、企業業績が復調しても、会社員の平均給与は減少傾向をたどっています。これは、日本市場が依然と低成長で推移する中、もしものためのキャッシュフローを潤沢に用意しておきたいという企業側の姿勢です。ただ、実力に自信がある人材であれば、この状況をずっと見守っているはずはないでしょう。海外の条件の良い企業へ流出する可能性は大いにあり、彼らを引き止める何らかの対策が必要です。

普通の人材が100人辞めるよりも、優れた人材を1人失う方が、企業にとってダメージが大きい時代に入りました。人海戦術で勝利できるのは、今後は中国かインドだけでしょう。これからの時代は、優れた人材を魅了する企業は、ますます優れた人材で構成され、そうでない企業とは大きな競争力の差が生まれると考えられます。これは全世界で起きている人材の争奪戦であり、それゆえにインターナル・ブランド戦略が重要な役割を果します。世界的にも数が少なく、自己のアイデンティティを確立している優秀な人材を振り向かせるには、顧客マーケティングと同様のブランド戦略が大切であると言えます。

READ MORE

MEMBERSHIP

Webビジネス戦略レビュー会員

メールアドレスをご登録いただくと、最新のWebビジネス戦略レビューをメールでお知らせするサービスです。

お名前

メールアドレス

WORKSHOP

HDC WORKSHOP

ハルデザインコンサルティングワークショップ

「海外ITベンチャー事例に学ぶ」Vol.1

日時:2013年11月12日(火)
   19:00~21:00

場所:東京丸の内 新丸ビル21cクラブ

開催報告

MOST VIEWED

【経営課題とブランド戦略vol.2】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(前編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.02】
スターバックスのブランド戦略がこれからも勝ち続ける理由

【ブランド戦略の威力 vol.14】
H&Mのブランド戦略

【経営課題とブランド戦略 vol.3】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(後編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.05】
日本酒「獺祭(だっさい)」のブランド戦略

【ブランド戦略の威力 vol.11】
なぜスターバックスは減速し始めたのか

【経営課題とブランド戦略 vol.6】
後発企業でも勝てるポジショニング戦略

30兆円の巨大市場、米国住宅リフォーム業界を狙う「Houzz」

【IT時代のブランド戦略 vol.06】
H&MとユニクロはUS市場を取れるか

実物の法律書類をオープンソースにしてしまう、法律業界の革命児Docracy

INDEX

教育・研究機関

公的機関

ファッション業界

フード業界

旅行業界

自動車業界

IT・家電業界

ネット業界

金融業界

健康・スポーツ業界

医療

海外事例

Webビジネス戦略理論

ブランド戦略理論

Keywords

ブランド戦略用語解説

▲ページトップへ