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【ブランド戦略の威力 vol.2】
米国における未公開企業の最前線(前編)

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2008/02/27

ベンチャービジネスの中心地である米国。
その最前線の動向を知るには、Inc(インク)という雑誌があります。
日本にもベンチャー系の雑誌がいくつかありますが、Incがそれらと大きく違うところは、全米の未公開企業を対象に、成長率上位5000社のデータを毎年発表している点です。このデータを利用すれば、総合順位から、今どのような業種が成長率が高いのか、また、各業種別においてどのようなビジネスが頭角を現わし始めているのか、時代に先駆けて発見することができます。
例えば、2007年の米国の広告業界で急成長した企業の特徴は、YahooやGoogleに代表されるPay Per Click(クリック課金)方式の広告ではなく、Pay Per Lead(引き合い獲得課金)方式を手掛けていたベンチャーでした。この事実が示しているものは、クリック課金型広告がコモディティ化の時代に入ったことと、顧客は広告にさらなる高い精度を求める傾向が顕著になっていることです。そして、2008年には、さらにPay Per Lead方式の広告ビジネスが、米国内で大きくシェアを伸ばすことが予想できます。

今回は、最前線の米国ベンチャービジネスの成長動向を通して、今後のビジネス・トレンドを考えたいと思います。


さて、このIncという雑誌。
私も定期購読でここ数年、アメリカから取り寄せているのですが、非常にユニークな雑誌です。
まず、未公開企業の成長率ランキングを算出するには、各社の決算情報が必要なはずです。上場企業のデータならば、証券取引所を通して発表されるため入手は簡単ですが、まだ公開していない、いわゆる草の根のベンチャー企業の決算情報をどうやって集めるのか。最初の疑問です。
しかし、Incの情報収集の仕組みは、至ってシンプルです。
1)全米の未公開企業がIncに対して、過去3年分の決済情報を送る
2)Incはそれを元に、成長率ランキングを算出し、発表する
不思議なことは、未公開企業が好んで自社の機密である決算情報をIncに提供する点です。これにも理由がありました。

米国は、ムーディーズやS&Pに代表されるように、格付を重視する国です。
フォーブスのビリオネア・ランキングは有名ですが、この他にも、住みたい都市のランキングや、上司にしたいCEOランキングなど、米国には様々な格付が星の数ほどあります。そして、この格付によって、企業や自治体、プロフェッショナルたちの評判が左右され、個々の収益や業績にも大きく跳ね返って来る。そのため、米国のベンチャー企業にとって、Incのランキングに掲載されることは、社会的評判と信用力の向上につながり、さらなる成長へ向けてのステップになるというわけです。

さて、今回は2007年に急成長した、広告・マーケティング業部門のベンチャー企業を見て行きましょう。
先ほどお話しした通り、Pay Per Lead方式のビジネスが躍進を遂げています。ランキング上位に入ったHydraMediaは、従業員40名のビバリーヒルズにあるベンチャー企業ですが、この3年間の成長率は6,000%。売上は70万ドル(約7,500万円)から4300万ドル(46億円)に跳ね上がっています。この成長を主導したのが、『You pay only for Result』のキャッチコピーが示す通り、Pay Per Lead方式のビジネスです。同じカリフォルニアにあるVantage Mediaも、同様の手法で、売上高を160万ドル(約1億7000万円)から4800万ドル(約51億円)に伸ばしています。
Pay Per Lead方式の広告ビジネスには、いくつかの種類があります。Vantage Mediaの場合は、検索エンジン、ポータル、アフィリエイト、メールの各広告媒体を研究し、最も投資対効果(ROI)が高い資金配分方法を解明し、このマトリックスを独自システムを通して顧客に提供することで、ある一定以上の成果を保証しています。
日本国内のネット広告代理店の多くは、検索エンジン広告への単純な出稿代行が主業務であり、頭脳よりも体力を使った営業に終始していますが、今後米国と同様に、クリック課金型広告の貧弱なROIの認識が顧客サイドで高まるにつれ、何らかの手を打つ必要が出て来るはずです。その場合、Pay Per Lead方式への移行が有力ですが、同時に、最適な資金配分を可能にするマトリックスの解明と、実行する独自システムが必要になります。これまで、ネット広告代理店とは言え、営業マンが手動で取り次いで来たアナログな国内のネット広告代理事業。今後は、真にテクノロジーを利用し、人間の能力を超えたサービスができるかが課題でしょう。または、Vantage Mediaのような米国ベンチャーのロジックを、ロイヤリティを払って使わせてもらう方法も残されています。

このような新しいビジネスのトレンドを知ることは、ブランド戦略にとっても重要です。
『新しい』ということは、企業にとって、ブランド活性化要素となるからです。逆に、『古い』ということが、ブランドを強化することはありません。歴史や伝統は、立派なアイデンティティの一つですが、それだけではブランド力はとは言えないからです。やはり、ルイヴィトンが伝統的なモノグラムを作る一方で、毎年、斬新な新作を発表する絶妙なバランスが、その企業のブランドの奥深さを創り上げています。したがって、既存事業を拡大させながらも、時代のトレンドを読み、新しい発想を絶えず仕入れておくことが重要であると思います。

次回は、急成長している他の業種も見て行きたいと思います。

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