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【ブランド戦略の威力 vol.1】
米大統領選に見るブランド戦略

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2008/02/18

『CHANGE』
何とシンプルなメッセージなのか。
2008年の米大統領選は、民主党内で2大候補が接戦をするという、異例の事態に世界中の興味が集まっています。実績を訴えるヒラリー・クリントン氏に対し、変革を叫ぶバラック・オバマ氏。マーケット・リーダ-対チャレンジャー。この競争構図の分かり易さが、多くの人々の興味を引き付ける要因になっています。

その中で、『CHANGE』という、誰にでも理解できる、たった一言を掲げるオバマ氏の戦略。
立候補当初はなかった、この一言が、今、着実に彼の躍進の追い風となっています。
明確なブランド・アイデンティティを作り出し、一貫した情報発信を行う。ブランド戦略の基本中の基本を押さえた手法です。
なぜ、この明確さが必要なのか。その理由の一つに、米大統領選は、広大なアメリカ合衆国全土を舞台にした、壮大な競争であることがあげられます。ニューヨークからシアトル、サンフランシスコまでの、東西南北の合計距離は、実に日本からインドまでの距離と同じです。物理的に細かな政策を語り歩くことは不可能であり、単純かつ強いメーッセージが、最終的に威力を発揮します。

今回は、米大統領選の民主党候補者争いにおける、オバマ氏とクリントン氏のブランド戦略について考えたいと思います。


企業にとっても、個人にとっても、自身のことを一言で表現することは難しいことです。
様々な経験や長い歴史が重なり合い、今の自分を構成しているからです。その膨大な構成要素を整理し、一言に集約することは、並大抵の努力ではありません。しかし、社内にしろ、顧客にしろ、人の支持を集めるには、この難題を実行するところに真の強さが生まれてきます。これが、ブランド・アイデンティティです。

バラック・オバマ氏は、これを見事に実行しています。
『CHANGE』。この言葉は、小さな子供でも理解できるほど、単純でストレートです。本来は、「どうCHANGEするのか」という、その内容の質が問われても良いはずですが、オバマ氏の『CHANGE』は、内容以前の競争威力を生み出しているように見えます。それは、『オバマ氏=CHANGE』、『クリントン氏=NOT CHANGE』という、両者のブランド・アイデンティティの競争です。実際に、クリントン氏が、『NOT CHANGE』なわけでも何でもありません。初の女性大統領は、大きなCHANGEになることでしょう。しかし、オバマ氏の『CHANGE』キャンペーンが繰り広げる一貫した強いメッセージが、あたかも両者をそのようなイメージの対立に見せているのです。

ブランド戦略の驚異的な力は、このアイデンティティが人々に伝染するところです。
以前、お話ししたアップルやヴァージンの事例。消費者が、これら革新的な企業の製品を持ったり、関わったりすることで、あたかも自分自身も先進的でクールな存在になった気になり、『自分=クール』というアイデンティティの欲求が満たされます。
同様に、オバマ氏の『CHANGE』も、人々のアイデンティティに伝染します。オバマ氏を支持することで、自分自身も『CHANGE』というアイデンティティを手に入れることができるのです。先にお話ししたように、個人にとって、自身のことを一言で表現することは難しいことです。自らのアイデンティティを明確に把握して生きている人は極々僅かです。そこに、『CHANGE』という、単純で強いアイデンティティの持ち主が現れたらどうでしょう。是非そのアイデンティティを自分も共有したい、と感じることは、至って普通のことなのです。

一方、クリントン氏は、その組織力、資金力を活用したキャンペーンが最大の特徴です。前大統領のビル・クリントン氏が側にいることから、ブランド戦略的に見ると、マスターブランドは、ビル・クリントン・ブランドとなります。成功した政治家ファミリーであり、今や代表的な『老舗ブランド』です。今回の候補者争いでは、明らかにマーケット・リーダーの立場であり、多くのマーケット・リーダーが実践するように、そのブランド・アイデンティティを、豊富な実績と経験、安心と信頼、洗練された知識などで構成しています。要するに、権威的なイメージの創出です。

このように両候補のキャンペーン活動を注意深く見ると、それぞれのポジションと戦略がはっきりしてきます。
もちろん、両陣営には、このブランド戦略を取り仕切るコンサルタントがいるはずです。
オバマ氏の場合、その若さゆえに、クリントン氏よりも経験力で弱みがあります。しかし、この点を逆手に取り、『CHANGE』キャンペーンを行う、『若き変革者』の姿を演出しています。また。変革者にふさわしい、斬新なCMの放映、Youtubeの利用、先進性が感じられるウェブサイトやロゴマークなど、一貫したブランド・イメージにも気を配られていることが分かります。
一方、クリントン氏は、老舗ブランドとしての権威が強みです。同時にそれは、変革から遠いイメージという点で、弱みでもあります。このイメージをどう払拭し、老舗ブランドの強さをアピールできるかが、今後のポイントでしょう。
実際に、どちらの候補が勝つのかと言う点については、政治の話になりますのでここでは避けますが、ブランド戦略的に見ると両者の戦略には学ぶところがたくさんあります。
特に、このところのオバマ氏の躍進は、『CHANGE』を軸にしたブランド戦略が効いていることは明らかです。最終的に、強いブランドは、活力があり、エネルギッシュであると言われています。そのような意味でも、今後のオバマ氏の『CHANGE』戦略に注目したいところです。

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