BUSINESS REVIEW
国内市場再生の鍵となる価値創造のトレンド
宮崎晴人

ハルデザインコンサルティング株式会社
代表取締役社長兼CEO
宮崎 晴人
HARU MIYAZAKI

ブランド戦略コンサルタント。主な専門分野は企業、商品、人材、CSR、IR。「ブランドによる経営課題の解決」がテーマ。米国シアトルの高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部卒業。1999年にハルデザインコンサルティング株式会社を設立。

【経営課題とブランド戦略 vol.13】
国内市場再生の鍵となる価値創造のトレンド

「日本マーケットには、もはや魅力がない」
世界からはこのように見られていると、最近の新聞やニュースコラムで盛んに言われています。
では、どこのマーケットであれば、魅力があるのか。経済評論家やコラムニストが口を揃えて言うのは、中国やインドをはじめとしたBRICsマーケットです。彼らの理由は簡単です。中国やインドは、2ケタ近い成長を続けています。世界の3分の1を占める膨大な人口も、年々増加しています。つまり、経済と人口がともに拡大しているところに投資が集まるという、至ってシンプルな理由です。一方、日本の状況は、対局にあると。人口減少は続き、経済成長も良くて数パーセント。北米や中国、インドの成長に、運良く連れ高している状況であると言います。
確かに、数字上は、このまま日本マーケットの魅力が薄れて行くように見えます。ただ、前提条件として、我々日本人が、全く暢気で、お人好しで、知恵を絞って努力することができないのであればの話です。

パイの大きさが固定化している国内市場でどう事業を広げるのか。そして、引いては海外展開を進め、日本マーケットに再び魅力を取り戻すことができるのか。今回は、グローバルマーケットの視点から、国内マーケットの攻略方法を考えたいと思います。


まず、経済成長していないマーケットは、パイの大きさが決まっているということを、念頭に置かなければなりません。現在の国内市場は、成長が止まっていますから、パイの大きさは昨年も、今年も、来年も変わらないと考えることができます。むしろ、人口減とともに、緩やかにパイは縮小するでしょう。
このような環境で、自社の事業を拡大し、毎年売上を向上させるということは、同時に他の誰かが売上を減らし、その事業が縮小しなければ成立しません。国内市場の大きさは固定化されており、椅子取りゲームのような状態になっているからです。日本のマーケットで売上を増やすということは、他社から売上を奪うという、大変人聞きの悪い話になります。しかし、露骨に低価格を押し進め、競合他社の売上をストレートに奪うばかりが方法ではありません。グローバルマーケット全体のトレンドを見ると、もう少し有効な方法が見えてきます。

限られたパイの中で、自社の事業を拡大し、売上を上げるには、『新しい価値を創造』が重要です。『新しい価値の創造』とは、よく企業のトップがビジョンに掲げる言葉ですが、具体的には以下の3つの要素で実現するものと考えられます。
1)価格
2)技術
3)視点

『価格』において新しい価値を創造するということは、低価格ということです。従来1000円したものを、500円で売る。現在の中国やインドの台頭を支えているのは、この価値です。先日、インドのタタ自動車が10万インドルピー(約28万円)の超価格破壊なクルマを発表した背景にも、価値の根源を『価格』に置く戦略が見えます。
『技術』においての新しい価値は、現在の日本が得意とする分野です。高画質DVDのブルーレイ・ディスクに代表されるように、日本企業は世界的な支持を集める優れた技術を持っています。技術立国の日本と言われる理由です。
『視点』の新しい価値とは、現在のアメリカが得意とするやり方です。たとえば、グーグル。学生だった創業者のラリー・ページ氏とセルゲイ・ブリン氏が、世界で最も優れた検索エンジンの技術を生み出しただけでは、今のような巨大な企業にはならなかったでしょう。その後の広告事業という『視点』を加えたことにより、はじめて彼らの技術はビジネス的な価値創造を生み出すこととなりました。そのような意味では、アップルも技術だけではなく、視点で価値を作る戦略です。最近の日本企業では、任天堂が唯一、この視点の価値創造によって、Wiiのヒットを実現させた代表です。

もうお分かりだと思いますが、ここからグローバルマーケットのトレンドが見えてきます。
経済の近代化の流れは、米国→日本→中国・インドの順で起こっています。これに価値創造のトレンドを重ねると、視点(米国)→技術(日本)→価格(中国・インド)となります。つまり、近い将来、『視点を軸にした価値創造』は、必ず日本に来るということです。

優れた技術を保有しながらも、低成長に甘んじている日本に、首を傾げているのは私だけではないでしょう。しかし、少し引いてグローバルマーケット全体の流れを見ると、まだまだ私たちがキャッチしきれていないトレンドがあるようです。パイが決まっている国内市場においても、『視点』に価値創造を求めることで、従来商品のリプレイスを実現し、事業拡大を行うチャンスは山ほどあると考えられます。なぜなら、多くの日本企業は依然として『技術』に価値創造の軸を求めており、次の価値創造の軸は『視点』となるはずだからです。Wiiの成功は、その大きなトレンドの序章です。優れた技術を追求すると同時に、優れた視点も加える必要がある。我々日本人が、国内市場を視点による価値創造で戦い、その最先端の手法をアジアや世界に広げることにより、再び日本に注目を集めることができるのではないかと考えています。

次回は、この『視点による価値創造』を行うにあたり、具体的にどのように進めるかを考えてみたいと思います。

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