ホーム > Webビジネス戦略レビュー > 【経営課題とブランド戦略vol.12】 所得格差がマーケティング戦略を変える

Webビジネス戦略レビュー

WEB BUISINESS STRATEGY REVIEW

【経営課題とブランド戦略vol.12】
所得格差がマーケティング戦略を変える

Google+
筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2008/01/23

NYで働く知人が、先日、ショックな話をしてくれました。
それは、テレビで日本の所得格差に関するニュースが流れていた時の話です。

「アメリカの中流層って、具体的にどのくらいの世帯所得か知っていますか?」
とっさに私は、日本ならば年収500万円から1000万円くらいだろうか、と頭に浮かび、そう答えると、知人は首を横に振り、こう教えてくれました。
「年収5万ドルから25万ドルが、アメリカではミドル(中流層)と定義されているのですよ」

5万ドルは日本円で530万円ですから、ひとまず正解でした。が、25万ドルは2650万円にもなります。
世帯年収2650万円以下は中流である、という事実。彼の話はこう続きます。
アメリカでは、ミリオン(つまり億)単位の所得を取っている人たちも大勢いるため、あえて中流層を定義すると25万ドル近辺までを含むことになると。ただ、中流層といっても5万ドルと25万ドルでは大違いであり、マーケティングの視点からは全体を2つのグループに分けて考えるそうです。それが、アッパーミドル(上級中流層)と、ロワーミドル(下級中流層)。この2つのグループに働きかけるマーケティング戦略は、同じ中流層向けでも全く種類が違うと言います。

さて、日本でも所得格差が注目であり、いつかはアメリカを追うことになるかも知れません。今回は、所得格差によって変わるマーケティング戦略について考えたいと思います。


まず、アッパーミドルとロワーミドル、この2つのグループの特性を見てみましょう。

アッパーミドルは、収入面で何らかの成功を収めた人々です。企業の幹部、医療・法律・金融など各分野でのスペシャリスト、中小企業の経営者などが、このグループに属します。彼らがここまでの成功に至った理由の一つに、他よりも多くの知識を得て来たことが挙げられます。1日24時間という同じリミットの中で、他よりも成果を出すには、時間ではなく、頭脳で稼ぐしか方法がないと知っている人々です。したがって、このグループの特性は、『教育』に非常に興味を持っていることです。子供の教育はもちろん、自分自身においても、常に教育的な視点を持っています。
もう一つの特性は、『価値を見抜く』ことを心がけていることです。価値やチャンスが見抜けずに、アッパーミドルに到達する人は稀でしょう。したがって、この層は、自分の価値観がはっきりしているグループです。あまり世間の流行や、他人の意見に左右されることはありません。野球のバッターに例えるならば、いろいろなボールに手を出さず、打つべきボールだけ、必ず打ちに行くタイプです。

一方、ロワーミドルは、一般のホワイトカラーから、自営業者、中小企業の管理職が含まれます。このグループの特徴は、年収5万ドルに近づくにつれ、世間の流行や他人の話に関心があることです。自身の価値観はあるものの、それとは別の次元で、むしろ社会との協調性を重んじるタイプです。したがって、同世代が家を買うと、同じように家を探し、車を買い替えると、同じように新しい車が気になります。また、この協調性は、家庭では『家族思い』や『ファミリー志向』として発揮されることがあります。
もう一つの特性は、『節約志向』であることです。価値よりも、価格に引かれるグループです。これは、将来の家族の増加や、老後の人生設計を考えた場合、節約を重視することは当然と言えるでしょう。したがって、高価なものよりも、お得なものを好む傾向があり、賢い出費を心がけます。勤勉に働き、節約を心がけ、幸せな家族を持つ。これが、このグループの特性と言えます。

さて、次に、この2つのグループに効果的なマーケティング戦略を考えてみましょう。

アッパーミドルをターゲットにする場合、マーケティングで効果を上げるには、『教育的視点』と『洗練された価値観』に応える戦略である必要があります。教育的視点とは、単に商品の魅力をアピールするだけでなく、それが必要とされる背景や、時代を先行する考え方などについて、明確な理論をもって教えてあげることが必要です。その商品を購入することで、他よりも知識レベルでアドバンテージが得られる。つまり、知的な側面から組み立てる脱コモディティ化の手法です。
もう一つの『洗練された価値観』に応えるには、商品やプロモーションのアイデンティティを際立てさせることが重要です。アッパーミドルの価値観はそれぞれ明確ですが、その種類は多種多様あり、マス・マーケティングが通用しません。彼らは、マス・マーケティングのような売り込みには応えず、自ら商品を選ぶ姿勢が強いため、数ある商品の中から選ばれるほどの商品個性の強さが必要です。

対照的に、ロワーミドルには、マス・マーケティングが効きます。協調性が強いため、皆が買うものは、自分も欲しくなります。TVコマーシャルのほとんどが、このロワーミドルを狙ったマーケティング戦略であることは明らかです。コマーシャルで紹介される商品は、お得な価格帯、ファミリー志向、社会の流行を前面に出したものが多く見られます。これらはロワーミドルの特性を押さえた戦略と言えるでしょう。このグループをターゲットとしたマーケティングを行うには、絶えず流行やライフスタイルのトレンドを追いかける必要があります。逆に、トレンドさえ押さえ続ければ、マーケティング戦略の成功率は高まるということです。

まとめると、アッパーミドルには、『知的アドバンテージ』を。ロワーミドルには、『トレンド』を、ということが戦略の基本になると考えられます。
これは、BtoCだけでなく、BtoBにおいても同じことが言えます。商品が高額になるほど、決済者はアッパーミドルに属するため、『知的アドバンテージ』でのアピールが重要になります。一方、小額商品は、ロワーミドルに属する決済者になるため、『トレンド』を前面に出した説明が効果的です。

欧米では、その歴史的背景から、クラス社会が存在しており、階層に合わせたマーケティング戦略やブランド戦略が巧みに練られています。日本は中流層が主体となって来ましたので、マス・マーケティング一辺倒でしたが、ここに来て近年の所得格差により、所得グループに合わせたマーケティングが徐々に確立しつつあります。マーケターとしては、変わりゆく日本の所得層に対して、常に最適な戦略を投下できるように、アメリカ型の所得階層マーケティングを参考にするのも一つの方法と言えるでしょう。

READ MORE

美白生活 2015年10月オープン あなたのシミのお悩み解決します。

MEMBERSHIP

Webビジネス戦略レビュー会員

メールアドレスをご登録いただくと、最新のWebビジネス戦略レビューをメールでお知らせするサービスです。

お名前

メールアドレス

MOST VIEWED

【経営課題とブランド戦略vol.2】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(前編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.02】
スターバックスのブランド戦略がこれからも勝ち続ける理由

【ブランド戦略の威力 vol.14】
H&Mのブランド戦略

【経営課題とブランド戦略 vol.3】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(後編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.05】
日本酒「獺祭(だっさい)」のブランド戦略

【ブランド戦略の威力 vol.11】
なぜスターバックスは減速し始めたのか

【経営課題とブランド戦略 vol.6】
後発企業でも勝てるポジショニング戦略

30兆円の巨大市場、米国住宅リフォーム業界を狙う「Houzz」

【IT時代のブランド戦略 vol.06】
H&MとユニクロはUS市場を取れるか

実物の法律書類をオープンソースにしてしまう、法律業界の革命児Docracy

INDEX

教育・研究機関

公的機関

ファッション業界

フード業界

旅行業界

自動車業界

IT・家電業界

ネット業界

金融業界

健康・スポーツ業界

医療

海外事例

Webビジネス戦略理論

ブランド戦略理論

Keywords

ブランド戦略用語解説

▲ページトップへ