ホーム > Webビジネス戦略レビュー > 【経営課題とブランド戦略 vol.9】 ブランディングが効果を発揮する成長ステージ(後編)

Webビジネス戦略レビュー

WEB BUISINESS STRATEGY REVIEW

【経営課題とブランド戦略 vol.9】
ブランディングが効果を発揮する成長ステージ(後編)

Google+
筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2007/12/06

インターネットの採用活動に異変が起きています。
求人サイトに出しても、応募はたくさん集まるものの、採用したいような優秀な人材は来ない。これは、一体どうしたことでしょうか。
原因は、求人サイトによる採用手法がコモディティ化してしまい、もはや選りすぐりの人材を獲得する方法ではなくなっていることが考えられます。能力に自信のある優れた人材が、誰でも応募できるサイトから、わざわざやって来るはずがありません。

シリーズ最終回は、拡大期のブランディングについてです。
拡大期の企業が、最も悩む課題は、優れた人材の採用と育成です。このステージでは、事業が順調に拡大している一方で、人材が追いついて行かない状況が多く見られます。追い風が吹いているにもかかわらず、優秀な人がいないために絶好のチャンスを逃すようでは、悔しい思いをするばかりです。驚異的に増大する仕事量を効率的に処理し、同時に増える顧客対応も向上させるという、拡大期特有の神業を行うには、優れた人材なしには実現できません。拡大期のキーワードは、まさに優秀な人材の獲得なのです。

コンサルティング大手のマッキンゼー&カンパニーは、こう言います。
「今日の人材マーケットでは、自分を売り込むのは、会社の方である」(*1)

今回は、拡大期のブランディングとして、人材戦略を中心にお話しをしたいと思います。


優れた人材を獲得するには、どうすれば良いのか。
マッキンゼーは、「明確なブランドのメッセージによって、製品が恩恵を被るのと同様の効果」が必要だと言います。
つまり、企業のブランド力によって、優秀な人材が、この会社に入りたい、という気持ちを抱くということです。これを実現するには、製品のブランディングや市場戦略と同じような手法を、人材戦略にも応用する必要があります。ブランド戦略を、採用活動にも使う。これは、グローバルに進む、人材戦略のメガトレンドなのです。

さて、具体的に、どのようなブランディングを行うことができるでしょうか。
ここで、採用ブランドを構築するとして、ブランドの基本であるアイデンティティを作ってみたいと思います。ブランド・アイデンティティは、自社、他社、市場と、3つの方向から検討し作り上げるというお話を、これまでもしてきました。
今回は、この中の市場ニーズを見てみましょう。

先のマッキンゼーの調査によると、優れた人材が働き場所として企業を選ぶ場合に、優先順位は以下のようになっています。

1位 刺激的でやり甲斐があり、熱意を持って取り組める会社
2位 一流の企業で働きたい
3位 自信の努力に十分応える報酬体系
4位 自分の能力を高めるスキルトレーニングがある会社
5位 自分や家族の時間が確保できる仕事

優秀な人材の特性は、『待遇』よりも、『やり甲斐』を望んでいる点です。
やり甲斐とは、何でしょうか。ひとつは、『社会を変える威力を持つ挑戦』だと思います。アメリカのグーグルには、飛び抜けてIQの高い人材が集まっています。グーグルほどの知名度になれば、優秀な人材もあつまるだろう。そう感じる方もいると思いますが、知名度であればGMやフォードもあります。GMやフォードになくて、グーグルにあるもの。それは、紛れもなく『社会を変える威力を持つ挑戦』という、企業ビジョンです。グーグルの根底にある、この挑戦的なアイデンティティこそ、優秀な人材を呼ぶ原動力であると言えます。グーグルの一員になれば、この偉大なアイデンティティを共有することができるのです。まさに、ブランド戦略の手法が活かされた、人材獲得です。

したがって、市場ニーズから見ると、優れた人材を獲得するには、企業は偉大なビジョンを掲げる必要があります。ビジョンが明確でない企業は論外であり、今日の人材獲得競争では、より挑戦的・改革的なビジョンを掲げねばなりません。そして、そのビジョンが言うところを、具体的に仕事の実績として示す必要があります。企業によって、それは革新的な技術力であったり、販売数であったり、成長率であったりします。しかし、シェアが大きいことや、研究所が充実していることを主張しても、挑戦的なビジョンが欠落していては、やり甲斐を求める優秀な人材には、ぬるま湯に思えてしまいます。本当に優れた人材は、お金のためになど働かないのです。

このように、拡大期における優秀な人材の確保も、ブランディングが重要な軸になります。売上が伸びている拡大期は、商品のブランド戦略は順調であると言えます。一方、これまで販売戦略に経営のウェイトを置きすぎた分、人材戦略は手つかずになっている場合が多くあります。拡大期の企業は、この段階で採用ブランドを構築することにより、その後の人材不足による業績の失速を避け、スムーズな成長軌道を描くことができると考えられます。


(*1)参考文献:エド・マイケルズ、ヘレン・ハンドフィールド-ジョーンズ、ベス・アクセルロッド  『ウォー・フォー・タレント』 翔泳社 2002年

READ MORE

美白生活 2015年10月オープン あなたのシミのお悩み解決します。

MEMBERSHIP

Webビジネス戦略レビュー会員

メールアドレスをご登録いただくと、最新のWebビジネス戦略レビューをメールでお知らせするサービスです。

お名前

メールアドレス

MOST VIEWED

【経営課題とブランド戦略vol.2】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(前編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.02】
スターバックスのブランド戦略がこれからも勝ち続ける理由

【ブランド戦略の威力 vol.14】
H&Mのブランド戦略

【経営課題とブランド戦略 vol.3】
ルイ・ヴィトンのブランド戦略に学ぶ(後編)- 商品の価値を高めるには -

【IT時代のブランド戦略 vol.05】
日本酒「獺祭(だっさい)」のブランド戦略

【ブランド戦略の威力 vol.11】
なぜスターバックスは減速し始めたのか

【経営課題とブランド戦略 vol.6】
後発企業でも勝てるポジショニング戦略

30兆円の巨大市場、米国住宅リフォーム業界を狙う「Houzz」

【IT時代のブランド戦略 vol.06】
H&MとユニクロはUS市場を取れるか

実物の法律書類をオープンソースにしてしまう、法律業界の革命児Docracy

INDEX

教育・研究機関

公的機関

ファッション業界

フード業界

旅行業界

自動車業界

IT・家電業界

ネット業界

金融業界

健康・スポーツ業界

医療

海外事例

Webビジネス戦略理論

ブランド戦略理論

Keywords

ブランド戦略用語解説

▲ページトップへ