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【経営課題とブランド戦略 vol.8】
ブランディングが効果を発揮する成長ステージ(中編)

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2007/11/28

先日、私の知人の方から貴重な質問を頂きました。
「宮崎さんがブランディングを行うにあたって、これは難しい、と思う企業はどのようなタイプなのか?」
日頃、私は、あまり意識はしていませんが、強いて言うならば、成熟期の事業のブランディングは、他よりもパワーが必要だと感じています。

私の仕事は、理論的に物事を整理し、企業が注力できるポイントを定めることなので、取りかかる時点では、ほとんどのケースがパズルを解く前のような状況です。そのような意味では、どのケースも取り組み甲斐があり、時間の問題でパズルは完成することも確信しています。しかし、パズルの中にも絵が見え易いものや、過去に私が手掛けたケースに似たものなどは、比較的スムーズに運びます。事業の創成期は、どれも革新的なアイディアや、活力やエネルギーを持っており、このステージのクライアントには似たような特徴があります。一方、成熟期の事業はどうかと言うと、時に、パズルの絵が見えなかったり、複雑なピースに出会う機会もあります。これは、長年の事業の間に、社内の古い意識や業界の慣習と言った、様々なしがらみに囲まれており、まず、『活力』を取り戻すところから取り組みを始めるため、余分にパワーが必要になってくるのです。

今回は、この成熟期におけるブランディングについてお話ししたいと思います。


事業が成熟期に入ると、どのような問題が出てくるのでしょうか。
まず、自社の製品・サービスが、他社と代わり映えしなくなり、業界内でコモディティ化が進行します。顧客の要求は高くなる一方、価格上昇の余地はない。むしろ、競合他社と差別化するには、価格を低く設定する必要性が高まり、価格競争へと突入します。価格競争は、当然、事業の採算性を悪化させ、利幅の縮小トレンドを描き始めます。そして、いつか利幅がゼロになるのではないか、という不安を抱えながらも、今日もまた足元の事業を、昨日と同じように回さなくてはならない。そのようなジレンマに陥った状態が、成熟期です。

成熟化は、社内のモーチベーションにも影響します。
「他社はこんなに安いのに、あなたの会社の価格は高い。なぜだ」
顧客からこのような厳しい価格要求が重なれば、営業の第一線も胸を張ることができません。価格面でしか見られない自分たちの仕事に、どのように誇りを持てば良いのか。普通の人間なら、誰しもそう感じることです。また、価格競争によって採算性が悪化すると、薄利多売の方法を取らざるを得なくなり、「もっと売れ、もっと売れ」というかけ声が、会社側から聞こえて来ます。このような過度のプレッシャーは、優秀な社員ですら追いつめ、社内の意識全体を萎縮させてしまいます。

顧客からも敬意を払われない。社員からも支持されない。
成熟期の事業は、まさに末期の様相を深めています。

有能な経営者ならば、このとんでもなく間違った状況を打開しなければ、と感じるはずです。
「ならば、顧客が勝手に、こちらに振り向いてれる方法はないのだろうか」
その一つの方法が、ブランディングです。成熟期の事業の場合は、リ・ブランドと言った方が良いでしょう。

リ・ブランドとは、文字通り、もう一度ブランドを再構築することです。
その鍵となるのが、『活力』を与えることです。この要素をブランド戦略用語では、『ブランド活性化要素』と言います。ブランド戦略の権威である、デービッド A. アーカー教授はこう言います。
「成功しているブランドには明らかに活力がある(*1)」
新鮮、若々しい、モダン、ダイナミック。これらの要素を、自社の事業に与えることにより、成熟期のブランドでも活性化させることが可能になるのです。これら活性化要素を、既存事業のあらゆるところに埋め込む。これが成熟期のブランディング手法です。

では、具体的に、どのあたりに要素を効かせるかについてです。
まず、製品・サービスのコンセプトに『活力』を与えることが、最初のステップです。良く誤解されますが、高性能であることと、活力があることは、全く違う話です。多くの成熟期の事業は、製品コンセプトが『高性能』に偏っています。つまり、生産者の視点でしか考えられていない。しかし、顧客視点に立てば、「それを使ってどれだけ喜びが増えるのか」ということが本当の重要ポイントです。
アップルのiPodは、確かに高性能ですが、あの程度の技術であれば日本のメーカーもつくれます。しかし、iPodが私たちに与えてくれるような『活力』はどうかというと、これはアップルの方が一枚も二枚も上手なのです。LVMHのベルナール・アルノー氏によって再生されたDiorも、見事に若々しく、フレッシュに生まれ変わり、グループの中核を担っています。国内では、ファーストリテイリング元社長玉塚元一氏のリヴァンプによるロッテリアのリ・ブランドと事業再生が注目を集めています。

このように、ブランディングで『活力』を与えれば、成熟期の事業を強化するばかりか、事業再生をもできる時代に入っています。
日本国内には、多くの優れた技術が存在します。伝統工芸ひとつとっても、素晴らしい技術があるにもかかわらず、ただ成熟期から脱出する方法がわからないだけで、埋もれてしまっている財産が山のようにあります。また、先端技術においても、日本企業がリードする分野はまだまだありますが、欧米のブランド戦略の上手さに引けを取っていることも事実です。
もっと私たちがブランドというものを認識し、その仕組みを最大に利用することに努力するならば、日本も今よりはるかに大きな成果が出せるだろうと思います。世界に一つでも多くの活力に満ちたブランドを生み出すことが、私自身のテーマですが、私も日本人ですので、できればこの動きが日本から活発化する日が来たらと、願ってやまないのです。

次回は、拡大期のブランディングについてお話ししたいと思います。


(*1)参考文献:デービッド A. アーカー 『ブランド・ポートフォリオ戦略』 ダイヤモンド社 2005年

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