
ハルデザインコンサルティング株式会社
代表取締役社長兼CEO
宮崎 晴人
HARU MIYAZAKI
ブランド戦略コンサルタント。主な専門分野は企業、商品、人材、CSR、IR。「ブランドによる経営課題の解決」がテーマ。米国シアトルの高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部卒業。1999年にハルデザインコンサルティング株式会社を設立。
【経営課題とブランド戦略 vol.7】
ブランディングが効果を発揮する成長ステージ(前編)
創成期、拡大期、成熟期。
これは、企業の成長過程を表す、3つの大きなステージです。個別の製品・サービスにおいても、同じ成長過程を歩みます。この3つの中で、ブランディイングが最も効果を発揮するステージは、『創成期』です。
私たちのブランド戦略コンサルティングを依頼される企業も近年増えて来ましたが、この創成期の製品・サービスのブランディングが圧倒的な数になります。
ブランド戦略の権威である、カリフォルニア大名誉教授デービット A アーカー氏は、こう言います。
「新興ブランドは最初に差別化を行っており、また、衰退ブランドを示す第一の指標は差別化の喪失である(*1)」
つまり、一般的に、新しい企業、または、新製品・新サービスは、ターゲットとする市場を十分研究し、自社の価値を差別化・明確化した上で、市場へ参入するものです。何の気もなくマーケットへ飛び込んでは博打であり、そのような経営者は皆無であると言って良いでしょう。しかし、長年事業を続けると、当然のように競合が増え、顧客の要求も厳しくなり、差別化が困難になっていきます。当初は、高い付加価値を誇っていても、徐々に特徴が見えにくくなる。デービット A アーカー氏は、その時が、『衰退』の最初のシグナルだと言っているのです。
創成期、拡大期、成熟期によって、ブランディングの手法が異なります。
今回は、この3つのステージで、それぞれどのようなブランディングが求められるのか、について考えたいと思います。
新しい事業に資本投下し、これから羽ばたこうとしている創成期の企業。
この時期に、万一、競合他社との差別化に苦慮したり、自社のアイデンティティが薄かったりしたならば、当初の事業プランに遅れを取ることになります。多くの経営者は、こういった状況を十分理解しています。したがって、ブランディングはマーケット・インする創成期に行われることが多く、また、最も効果を生むタイミングであると言えます。
私たちのブランド戦略コンサルティングにおいても、創成期のブランディングは、最も効果を発揮します。なぜなら、新しい製品・サービスは、そもそも既存商品との差別化を軸に発想されているからです。つまり、企業サイドから見た差別化の要素は考えられており、後は、顧客サイドから見た価値を分析し、最終的にブランドとして力を持たせれば良いのです。
創成期のブランディングにおいて、あえて専門チームを結成する理由には、以下の3つがあります。
1)客観的な視点から自社の強みを発見するため
社内で自社の競争力を検討すると、知らずの内に社内の視点から逃れられなくなり、市場(顧客)ニーズとのズレが生じることがあります。自社の強みは、競合他社と差別化する一方、市場ニーズと合致していなければ広がりが小さくなります。ビジネススケールに広がりを持たせるためにも、客観的な強みの発見が重要なポイントとなります。
2)自社の強みを一言に集約するため
市場のグローバル化・成熟化によって、顧客の選択肢は山ほどあります。これら多種多様な商品の中から、自社の製品・サービスを発見してもらうためには、小さな特徴を山ほど積んでもアイデンティティは強くなりません。顧客の心を掴むには、圧倒的な強さを一言で表現する必要があるのです。
3)長期間にわたり維持可能なブランドを確立するため
ブランドと呼ぶには、長期間にわたって維持可能な強さが必要です。この強さが積み重なることにより、ブランドが確立されます。毎年のようにブランドの方向性が変化するような戦略は、短期的なマーケティング戦略であり、おおよそブランド戦略ではありません。一方で、創成期にこの先10年、20年と維持可能なアイデンティティを定義する必要があるため、社内のメンバーだけでなく、ブランド戦略の専門家を加えたチームで対応する方が、当然、確実性が増すと考えられています。
さて、創成期に続き、拡大期、そして成熟期のブランディングは、やや難度が増して行きます。
拡大期の最大の課題は、人材の育成や確保。事業が順調に伸びても、人が付いて行かない状況に陥ります。これをブランディングでどう解決するか。また、成熟期のブランディングは、まさに、リ・ブランドです。衰退のシグナルが見える中、もう一度、ブランドを活性化させる戦略が必要となります。
次回は、この2つのステージについてお話ししたいと思います。
(*1)参考文献:デービッド A. アーカー 『ブランド・リーダーシップ』 ダイヤモンド社 2000年
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