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【実行戦略を練る vol.4】
ポルシェのブランド戦略

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筆者近影

宮崎 晴人(ハルデザインコンサルティング株式会社 取締役会長)

2007/09/27

納車までに平均9ヶ月待ち、新型車については1年半。
1台につき1000万円前後の出費を迫るにもかかわらず、どんな金持ちであろうと関係なく並ばせてしまいます。世界で唯一の独立系スポーツカーメーカーであると同時に、自動車メーカーの中で最高の利益率を誇る企業、ポルシェ。そこまでして欲しいと消費者に思わせるブランド力は、どこから来るのか?
フラッグシップである911の偉業を軸に、高級SUVカイエンの成功、ケイマンのリリースと続き、話題はポルシェ初の4ドアセダン戦略車「パナメーラ」の開発。そして、9月ポルシェは、既に31%保有するフォルクスワーゲン・アウディ・グループ(以下VW)の株式を、買い増すと発表。2007年内にも経営権を取得する方針です。

近年、ポルシェは、世界の自動車業界で最も良い利益率を誇ります。その利益率は、20%。世界のトヨタが10%ですから、驚異的な採算性と言えます。
ポルシェの2006年度の生産台数は、9万7515台。VWの生産台数が約500万台、トヨタが約900万台と比べると、いかに小規模な自動車メーカーかがわかります。しかし、同年の利益額は、VWの4200億円に対して、ポルシェは3000億円強。生産規模が50分の1にもかかわらず、利益ベースでは同等のレベルです。
なぜ、これほどまでに利益率が良いのか。高額なプレステージ・カーを販売しているからなのか。それであれば、メルセデスベンツやBMWも十分高価格帯の車を生産していますが、実情はトヨタにも及ばない利益率です。
この背景には、ポルシェが近年取って来たブランド戦略があります。
そのブランド・アイデンティティは、『壊れないプレステージ・スポーツカー』。

1992年当時、ポルシェは深刻な赤字を抱える、危機に瀕した自動車メーカーでした。社長に就任したヴェンデリン・ヴィーデキング氏は、まず経営を立て直すために大規模なリストラを行います。その効果で、1994年には黒字転換を遂げます。しかし、ヴェンデリン・ヴィーデキング氏は、それだけでは十分でないと判断します。
「日本の自動車メーカーは、なぜ高い品質と生産性を維持できるのか。これをポルシェでも実現できないのだろうか」
この思いが、ポルシェの品質を向上させ、生産性の効率化を高める原動力になります。徹底的な日本メーカーの研究と、品質へのこだわり。これを契機に、ポルシェは、車としての品質を大幅に改善して行きます。

そして現在、ポルシェは、世界でも最も壊れにくい車の一つとなっています。
この事実を知り、私自身、驚きました。インターネット上のユーザレビューにおいても、「壊れやすい」という感想は見当たらず、非常に高い評価を得ているのです。
元来、スポーツカーにおいては、走りへの追求から、日常の耐久性は二の次とされて来ました。購入者も、スポーツカーだからということで、多少の故障は暗黙の了解であり、それが文化でした。しかし、同時に、スポーツ車の購買層は年々縮小していることは事実であり、トヨタを始め、多くのメーカーはスポーツ車から撤退をしています。
そこにポルシェは、『壊れないプレステージ・スポーツカー』を誕生させました。壊れないスポーツ車。そのようなものは、今までこの世になかったのです。これが、ポルシェを唯一無二のブランドへと押し上げたのです。
壊れないプレステージ・スポーツカーだと、何が変わるのか?まず、成功したビジネスエリートが、新たな購買層に入って来ました。ポルシェというプレステージ性。そして、壊れないのであれば、ビジネスや通勤にも使えます。実際に、ポルシェの50%の購入は、米国の景気拡大の波に乗ったビジネスエリートが支えているのです。
スポーツ車は、品質が悪くて壊れる。ヴェンデリン・ヴィーデキング氏は、この常識を覆しました。そして、『本質』を追究したのです。車の『本質』とは何か。それは、『きちんと走る』ということに他なりません。今や、ポルシェのブランド・アイデンティティは、スポーツ性やプレステージ性だけでなく、日常車としての安心をも提供するようになったのです。

2007年9月。ポルシェは、VWの経営権の取得に動き出しました。VW、アウディ、ポルシェの巨大グループの誕生です。この大きな組織においても、ヴェンデリン・ヴィーデキング氏は、ポルシェの経験をもとに、ブランドとしての『本質』を追究することでしょう。また、2007年は、ダイムラー・クライスラーが9年の合併体制を打ち切り、クライスラー部門をサーベラスに9000億円で売却しました。今後は、本来のメルセデスベンツ・ブランドの復活を、戦略の中心に据えるでしょう。
自動車業界は、規模の論理の時代から、『本質』を追究するブランド戦略の時代へ移ろうとしています。

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