BUSINESS REVIEW
3つの主義で変わるアウトプット
宮崎晴人

ハルデザインコンサルティング株式会社
取締役会長
宮崎 晴人
HARU MIYAZAKI

ブランド戦略コンサルタント。主な専門分野は企業、商品、人材、CSR、IR。「ブランドによる経営課題の解決」がテーマ。米国シアトルの高校卒業後、慶應義塾大学環境情報学部卒業。1999年にハルデザインコンサルティング株式会社を設立。

【ブランドの原点を探る vol.3】
3つの主義で変わるアウトプット

ブランドの原点が異なると、導かれるアウトプットも変わります。
前回お話しした、3つのタイプ。「顧客主義」、「商品主義」、「効率主義」。企業は必ずこの中の1つに属する、という内容でした。
例えば、コーヒー業界を見てみましょう。顧客主義=ユニマット、商品主義=スターバックス、効率主義=ドトール、と当てはめることができます。企業に深く入っているユニマットのビジネスは、まさに顧客主義です。この主義のビジネスは、カスタマイズ能力が突出しています。圧倒的な商品主義を誇るのは、スターバックス。コーヒーの味もさることながら、一度見たら忘れられないクリエイティブな世界観。どこか前回のアップルに通じるところがあります。そして、スターバックスよりも手軽な値段で勝負するドトール。明らかに効率性が競争力です。
中身は、同じコーヒーです。しかし、選択する主義によって、これほどいろいろな演出方法があります。この3社を比較するだけでも、いかにアウトプット、つまり商品の見せ方が違うか、お分かりになるでしょう。

上記を踏まえると、ブランド戦略をアウトプット側から検討することは、明らかに間違いです。
商品の見せ方は、最終的には重要です。が、それだけでは、中身はカラであり、ブランドとして顧客に伝わるものはありません。顧客は、商品とその周りにある世界観を通じて、企業が発するメッセージを感じるものです。そこにファンが付き、お金を払う。それが実現して初めて、ブランド力と呼ぶことができます。魅力のある人の共通点が、外見だけでなく中身が素晴らしいことと同じです。形だけのブランドつくりは、全く意味がないのです。

多くの場合、企業は既に、3つの主義のいずれかに属しています。そうでなければ、今この瞬間、存続していないはずです。
問題は、その主義を再確認し、研ぎすますことができるか、です。先の例にある、コーヒー業界3社は、それぞれの主義を研ぎすましています。誰でも思い浮かべることができる、ということは、それだけブランドが際立っていることです。しかし、コーヒー業界には、他にも無数の企業があるはずです。レトロな昔ながらのコーヒーショップもその一つですが、残念ながら記憶には残りません。これが、ブランド力の違いです。

では、このレトロなコーヒーショップのブランド力を上げるには、どうしたら良いのか?
まず、3つ主義の中から一つを選びます。そして、その主義を研ぎすまします。
商品主義を選択したとします。レトロなコーヒー店であれば、そのレトロさを徹底的に際立たせて、エンターテイメント性を持たせることもできます。お店に入ったとたんに、50年前へタイムスリップです。コーヒーカップも灰皿も、マッチのパッケージも、全部昭和のテイストに統一。メニューもユニフォームも、可笑しいほど懐かしくする。このようなお店があったら、メディアの取材が見逃すはずがありません。
また、顧客主義を選択するのであれば、ホテルのようにお客様ひとりひとりの名前を呼んだり、スタッフのプロフィールをホームページで公開するなど、信頼関係向上の努力はいくらでも思いつくはずです。

主義を研ぎすますということ。
ブランディングがうまくできない場合の多くは、企業が主義を研ぎすますことに躊躇するからです。高度成長期の習慣で、今でも、日本人全員に買ってもらえるようなブランドを作ろうとします。しかし、結果は、誰にも買ってもらえない。なぜなら、全員に買ってもらおうとすると、競合他社と同じブランディングなり、自社にブランドがないも同然になるからです。最終的に、差別化ができないまま、価格競争へと陥ります。典型的なブランディングの罠です。選択肢が豊富な成熟社会であれば、尚更のことです。膨大な情報の渦の中、顧客がより際立ったブランドに引き寄せられる現象は、当然のことと言えます。
まず、主義を再確認しましょう。そして、それを研ぎすます。そうすれば、自ずとアウトプットが見えてくるはずです。

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